オフィスにラブは落ちてねぇ!!
別人なのか?
定時になると、愛美はさっさと退社した。

とにかく今日は飲みたい気分だ。

駅のトイレで軽く化粧を直し、行きつけのバーへ向かった。

カウンター席に座っていつものようにウイスキーの水割りをオーダーする。

「愛美ちゃん、今日はずいぶん早いね。」

「早く飲みたい気分なんだ。飲まなきゃやってられない。」

「なんかイヤな事でもあった?」

「大アリだよ。」

マスターは愛美の前に水割りを置いて優しく笑う。

「愚痴くらいなら聞くよ?」

「んー…やっぱマスターは男前だなぁ。そうだ…誰かいい人いない?」

「目の前にいるけど?」

マスターが自分を指さすと、愛美はグラスを手に笑う。

「そうなんだけど…マスターはダメ。奥さん泣かせちゃうから。独身で背が高くてめっちゃいい男、いないかな?」

「愛美ちゃん、面食いだっけ?」

「いやー…どうかな。普通。」

「ふーん…。背が高くてめっちゃいい男ねぇ…。」

「うん。でもホストとかじゃなくて、ちゃんとした仕事してる真面目な人がいい。できれば性格も優しくて穏やかな方がいいけど…。」

「そりゃ欲張り過ぎだろう…。」

「だよねぇ…やっぱ、そんな都合のいい条件に合う男はいないかぁ…。」

マスターはビールを飲みながら、愛美の条件に合う男はいないかと考える。

「ああ…いるなぁ、一人。俺の大学時代の後輩。会ってみる?」

「ぜひ!」

「じゃあ、呼んでみようか。でもアイツ、見た目の割に女慣れしてなくて紹介とか苦手だからな…。とりあえず飲みに来いって誘ってみよう。」

愛美は上機嫌でグラスを傾けた。

(頼んでみるもんだなぁ…。)




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