腹黒王子に秘密を握られました
 
そんなことを考えて、バスの窓に額を押し付けて溢れる萌えを噛み絞めていると、

「お前、興奮しすぎて鼻息で窓ガラスが曇ってるぞ」

と冷たい声が聞こえてきた。

「はっ……!」

ぎょっとして振り返ると、そこにいたのは、

「金子敦……!」

貴様、なぜここに!
私の座る一人掛けの座席の横に、いつのまにか金子が立っていた。

昨日の即売会といい、今日バスといい、なんて神出鬼没な男だ。
もしかして、ストーカー? こいつ、私のストーカーなの?

「バァカ。誰がお前のストーカーだ。俺も普段からこのバスに乗ってるんだよ」

まじですか。知らなかった。それならもっと前に、声をかけてくれればいいのに。

「お前いつも窓の外ながめて、男子高校生を見ると目を血走らせてるから、声をかけにくかったんだよ」

「くっ……」

たった今も、自転車の二人乗りをする高校生を見て、妄想にふけっていたところだった私は、反論もできずに歯を食いしばる。


< 32 / 255 >

この作品をシェア

pagetop