イケメン御曹司に独占されてます
まず、あの日私に辛辣な言葉をぶつけたお嬢様たちから——厳密にはその使いだという人からだけど——とても丁重なお詫びを受けることになった。
それぞれとても丁寧な手紙と高価な品物を渡されたけど、お手紙だけ頂いて品物はお返しした。

いくら断ってもかなりしつこく食い下がられ、業を煮やした池永さんが結構キツい口調で断ってくれてようやく納得してもらえたけど、きっとあの人も渡して帰らないと怒られるんだろうな、なんて何となく思う。


そして専務の奥様からも可愛い贈り物を頂いた。
『私がこんなことを頼んだばかりに』と会社帰りに七海子と一緒に呼び出され、素敵なレストランでお食事までご馳走になった。

専務の奥様は想像以上に綺麗で優しい方だった。私も七海子もひと目でファンになってしまったし、それに専務も、この一件にはとても気を遣ってくださって……。却って申し訳ないと思うほどだ。


そして当の池永さんは——。


私は隣で取引先と電話で話している池永さんを、そっと盗み見る。

相変わらず隙のない横顔は、眼鏡では隠し切れない端正さ。薄い唇と繊細な顎のラインは女の人みたいに綺麗で、油断をすると見蕩れてしまう。


和やかに談笑しながらペンを回す指先は長く、肩からスラリと伸びる腕は華奢に見えて意外とたくましい。
私は小さなため息を付いて、伝票に向かう。
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