嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


「いややわ、折角の日やのに」

お母さんが朝食の用意をしながら誰ともなしに呟いた。

「夜は成海さんとお祝いの食事会やからね。5時には家にいてよ」

「うん、分かってる・・・・・けほっ・・・・・」

「まだ咳が残ってるわね。気をつけなさいよ」

「ん・・・・・」

暫く寝たり起きたりの生活をしていたので、外出するのが少し辛い。

卒業生代表の挨拶、池上くんだよね。

これで見納め。

東京に行ってしまう。

隣には澤村さんがいてーーーー。


バッグの中に入れてある携帯がメールの着信を告げた。


『卒業式が終わったら図書室で待ってる』

少し震える指先で、携帯を操作する。

『了解です』

シンプルな返信。
思えばわたしたちの関係もシンプルなものだったのかもしれない。

たまたま受験が早く終わった暇な者同士、楽しく一時を過ごしただけ。

この間のことを謝られたら、そう言おう。

楽しかったよーーーと。


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