嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


熱に浮かされながら、耳が携帯の着信音を捉える。

池上くんの名前が表示されるけれど、出ることができない。


あのキスを謝られるのが怖かった。


たとえ弾みだったとしても、わたしのファーストキスを間違いにして欲しくなかった。



『インフルエンザと風邪がダブルできて、話すことも億劫です。電話に出られなくてごめんなさい』

メールで断りを入れる。

『わかった。お大事に』

素っ気ない返信に心まで弱る。

いつの間にか、池上くんのことが好きになっていたんだーーー漸く自分の気持ちに気付いた。



アホやなあーーーーわたし・・・・・。



本の虫のわたしにやっと訪れた初恋やったのに。

ベッドの中で胸の痛みに人知れず泣くとか、そんなキャラやってことも大発見だったーーーーーー。



卒業式の日。

3月に入ったばかりとはいえ、暦の上ではまごうことなく春なのに、朝から雪が舞っている。







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