Time Paradox
危険

微かな足音

リリアーナはアパートの建物から出ると、太陽はすでに空高く昇っていた。


リリアーナは行く当てもなく歩いていると、前にバスで通りかかった森が見えてきた。

今日も森の近くのバス停にはバスが停車していたが、バス停にいた人達を拾うとすぐに走り去って行った。

リリアーナはふと、絵本の事を思い出した。

絵本では、ハンナは森の妖精の手助けで時間を動かした。


だが、リリアーナがふらふらと森へ入ろうとすると、後ろから腕を掴まれた。

驚いて後ろを振り返ると、そこには全く面識のない男が3人立っている。

「痛っ!」

そのうちの2人がリリアーナを押さえつけると、もう1人はリリアーナをジロジロと見ていた。

「…何なの?」

「…間違いないようだな。」

その男はそう言うと、指を鳴らし、押さえつけている2人に目配せをした。

すると目の前に、黒塗りで高級感のある車が停車した。

通りに人の姿はないように見えたが、リリアーナは助けを呼ぼうと口を開くと、口を押さえられ、その高級車に乗せられてしまった。


連れ去るにはあまり時間はかからなかった。

車の後部座席には、リリアーナがさっきの男2人に挟まれる形で乗せられ、逃げる隙もないようだ。

前の座席には運転手と、先ほどリリアーナをじろじろと見つめていた男が乗っている。


リリアーナが外の様子を窺おうとするが、車の窓は黒いカーテンでしっかりと覆われていた。

リリアーナがそっと右側のカーテンを開こうとすると、右側にいた男が腕をひねる。

「痛たたた!」

リリアーナが声を上げると、助手席に座っていた男が右側の男に、また目配せをした。

すると、その男はリリアーナの頭をがっしりと掴んだ。

リリアーナは訳が分からず、意識をなくしていた。
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