Time Paradox

宣戦布告

リリアーナがこのアーノルド家に誘拐されてから2日目の朝。

空が明るくなり始めた頃にやっと眠りについたリリアーナだが、わずかな物音にも過敏になり、目覚めてしまった。

目を開けると、もうすっかり朝になっていた。

リリアーナは屋敷に来た時に着ていた服に急いで着替えると、廊下の様子を窺った。

赤いカーペットの敷いてある廊下には人の気配がなく、リリアーナはそっと部屋を抜け出した。

だが階段を降り、あと少しで外に出られるというところで誰かに腕を掴まれた。

驚いて振り返ると、そこには冷めた表情のルーカスが立っていた。

リリアーナは焦り、手を振りほどこうとすればするほど強い力で締め付けられる。

「…私、家に帰りたかっただけなの…」

リリアーナはここでも記憶のないふりをする。

ルーカスは納得したような顔をすると、手を握る力を弱めて言った。

「リリアーナ様、お気持ちは分かりますが、この屋敷にいる事が一番安全なのですよ。今夜もパーティーがございます。まずゆっくりお休みになってください。」

ルーカスはリリアーナの腕をしっかりと掴み、また部屋へと引っ張っていった。
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