季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
約束の時間まで適当に時間を潰した。

そしてやっと約束の6時になる少し前。

待ち合わせしたカフェにやって来た壮介は、コーヒーをオーダーして、まずは一息ついた。

「元気?」

「まあまあ。そっちは?」

「まあまあかな。」

この間まで婚約者だった人というよりは、昔の同級生か友達にでも会うような感覚だった。

ああそうか。

私の中で壮介は、もうすっかり過去の人になっているんだ。

ものすごく好きだったわけじゃないけど、3年も一緒にいてそのうちの2年間は生活を共にしていたからか、妙な情がある。

「これ、残りの分な。遅くなって悪かった。」

「うん。」

封筒の中をこそっと覗いて、枚数をササッと確認した。

「確かに。」

お金の入った封筒をバッグにしまって、コーヒーを飲みながら考える。

さて、どうやってつついてやろうか。

まずは子供は無事に生まれたのかと聞いてみようか。

それとも、奥さんは元気?かな。


「もう生活は落ち着いた?」

私より先に壮介が尋ねた。

「うん、まあ。壮介は?」

「まだバタバタしてるよ。」

よし、この流れで聞いてみよう。

「そう…。子供は無事に生まれたの?」

「えっ?!いや…えっ?!」

ふふふ…驚いてる驚いてる。

「見ちゃった。二人で歩いてるの。」

「あっ…。」

壮介はバツの悪そうな顔でコーヒーをすする。





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