季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「あのね…今更責める気も失せたけど、ホントの事を聞きたいだけ。奥さんは前に会った人じゃなくて、紗耶香なんでしょ?」

「……ごめん。」

「で?無事に生まれたの?」

「ああ、うん…11月に入ってすぐ。女の子が生まれた。」

「そっか。一応おめでとうって言っとく。」

「ありがとう…。」

さて、本題に入るか。

「壮介も人が悪いよね。私と同棲してた2年間ずっと紗耶香とも付き合ってたんでしょ。」

「え?」

「私との結婚が決まった時には既に紗耶香が妊娠してたのに…なんでもっと早く言ってくれなかったのかなーって。」

「ちょっ…ちょっと待て。なんでそうなる?」

壮介はわけがわからないと言いたそうな顔をしている。

「あれ?違うの?」

「俺が紗耶香と初めて二人で会ったのは…朱里と同棲初めてから1年以上は経ってた。」

「え?」

「ずっと付き合ってたわけじゃないよ。朱里といずれは結婚するつもりでいたから。相手は朱里の友達だし…深入りしないうちに終わりにしようって。3ヶ月くらいで一度は別れた。会ったのもほんの数回だし。」

「……そうなの?」

志穂から聞いた話と随分食い違ってるな…。



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