季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
どんなに抵抗しても、順平は私を押さえ付けて離してくれない。

はだけた胸を舌と指で執拗に弄ばれ、私の中のあの頃の私が悲鳴をあげた。

「やめて!!順平は私が嫌がる事はしない!!」

思わずそう叫んだ。

無意識のうちに涙が溢れていた。

順平はほんの一瞬目を見開き、私の体から手を離して目をそらした。

「……ちょっと飲みすぎた。もう寝る。」

黙って立ち上がり部屋に戻って行く順平の後ろ姿が、涙でにじんでぼやけて見えた。

私はゆっくりと起き上がり、乱れた着衣を整えて両手で顔を覆った。


きっともう、私が好きだった順平はどこを探してもいないのだろう。

あたたかかった大きな手で、優しかった唇で、私に触れる事は二度とない。

できれば知りたくなかった。

どうせ騙すなら、せめてもっと上手に騙して。

私の好きだった優しい順平に抱かれているんだと、錯覚するくらいに。

今も私たちは愛し合っているんだと、勘違いするくらいに。

それならばきっと、騙されているとわかっていても、少しは幸せだと思えたのかも知れない。







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