甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

医薬品卸と担当エリアの病院の訪問を終え、夕方に始まる勉強会に向けての最終確認の為に、早めに営業所に戻ってきた。
今日の勉強会はここではなく第二営業所でやる予定なので、少し緊張する。

資料を部数分コピーしていると課長が現れ、「出るの18時でいいな」と声をかけられた。

「えっ?」
「えっ? じゃねーよ。昨日言ったろ。俺も同行するって」

やりづらいと心の中で絶叫したけど「なんだよ」と私の顔の異変に気づき睨まれる。
「承知しました」としか言えなかった。
緊張感がプラスされるだけで、最悪だ。








課長は「鍵」と言うと私の手から雑に受け取り、社用車のエンジンをかけた。
乗り込み開口一番、「湿布くせー」と呟いた。
はい、それ私ですとすぐに言えない。

「朝も思ったんだよな。なんか湿布の臭いするって。犯人はお前だったのか」
「ちょっと足を捻りまして」
「バカだな」
「……そうですね」
「何で捻った?」
「朝、ランニングしてたら、転びかけて」
「お前、そんな趣味あるのか」
「いえ。今日から始めました」
「へえ。なんでまた急に。お前、学生のとき陸上でもやってたの?」
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