史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
4章 甘い嘘の終わり
「おはようございます」

始業より30分早くフロアに入ると、課長と霧島さんが課長のデスク前で難しい顔で話し込んでいた。

霧島さんはともかく、課長は始業時間通りに出社する人なので珍しい。

何かトラブルかな・・・


「佐倉、ちょっと・・・」

いつも穏やかな課長が苦虫を噛み潰したような顔で私を呼ぶ。


どうやら、予感は的中のようだ。

私は慌ててコートを脱ぎ捨てて、課長のもとに向かった。



「え!? ウィザーが出店辞退??
もう合意契約書も締結済みなのに、どういう事ですか!?」


課長に代わり、霧島さんが口を開いた。

「米国本社で取締役の交代が決まったらしい。それにともなってアジア地域の出店戦略を見直すーーつまり、しばらくアジアには出店しない」

「そんな、急に・・・」

「向こうの企業は株主が圧倒的に強いしトップの解任、交代はよくあることだ。
契約書の内容に基づいた違約金も全て払うと言われた以上、こちらとしてはうつ手がない」


ウィザーは米国のアパレルブランドで西海岸風のカジュアルな洋服とインテリア雑貨が手頃な価格で手に入ると、ここ数年で一気に人気に火がついた。
ヨーロッパ各地とアジアでは香港に店舗があるけど、日本では私達の夢見が丘テラスが初出店となるはずだった。


今回のプロジェクト一番の目玉で、プロモーションにも力を入れていく予定だっのに。
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