すきだから
千歳の真っ直ぐな瞳とその言葉が物凄く心に響く。
それと同時に恥ずかしさが我慢出来ずに俯いてしまう。

もう少し自分に自信があるのなら、千歳の言葉に素直に喜んで好きになれるのだろうと思う。
でも、喜ぶ前に申し訳なさが先立つのは、やっぱりまだ疑心暗鬼なのだろうから。

人の気持ちは変わる。

あんなに好きだって言ってくれた雄太だって、今はもう隣にいない。
もし、千歳の事を好きになって、でも千歳の気持ちが変わったら?

だって私にはこれ以上何がある訳じゃない。
外見がいい訳じゃない、話が上手い訳じゃない。

全てが平均的の、平凡な女。

そう考えるとどうしても自分の気持ちにセーブがかかってしまうんだ。

「香苗ちゃんは自己評価が低すぎるよ。もっと自信を持った方がいいと思う」

私の心を読んだかのように、千歳はそう言った。
思わず千歳を見上げる。

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