知らない貴方と、蜜月旅行
*変なもん拾ってんじゃねーよ
「ねぇねぇ、蒼井(あおい)さぁん!」
「あ?なした、陽悟(ひさと)」


学生時代の後輩が、俺を呼ぶなり、なにかを押し付けてきた。


「おい、なんだよ」
「へへっ、拾っちゃいました!」
「あ?んなもん、どっから拾ってきたんだよ」


拾ってきたもの……。それは、女だった。相当飲んだのか、すげぇ酒臭ぇ。


「お前なぁ…。今すぐ、元にあった場所に置いてこいよ」
「うわっ、ひでぇ!さすが鬼のようですね!蒼井さんってば」


〝ひでぇ〟と言いながらケラケラ笑う陽悟。よっぽど、こいつのほうが俺には、ひでぇ奴に見えるんだが…。


「だって、この女どうすんだよ」
「んー、それは責任もって蒼井さんが」
「なんの責任だっつーの。ふざけんなよ?」


なんで俺が面識もないこの女を持って帰らなきゃいけねぇんだよ。責任なら、勝手に拾ってきた陽悟が持って帰れよ。


「いやー、だってこの子、かわいそうじゃないですかー。今日はクリスマスイブですよ?あんなところに置いといたら、死んじゃいますってー!」
「だから、んなもん、自業自得だろうが。心配なら、お前が持ち帰れよ」


確かに12月のこの寒い季節だ。放っとけば、無事じゃ済まねぇかもしんねぇけど、やっぱり俺には関係ねぇ。


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