強引同期と恋の駆け引き
 № 3 


 ◇ ◇ ◇


披露宴がお開きになったころには、日が暮れ始めていた。

二次会は同じホテル内で会場を移して行われる。
幹事として名を連ねている私は、履き慣れないヒールの高い靴に痛む脚で一足先に会場にいた。

といっても、私は会社の方での出欠席を取って連絡する程度しかしていないので、さすがに当日くらいはなにかお手伝いをと申し出てみる。

「じゃあ、ビンゴのときにガラガラを回す役をお願いできますか?」

新郎の大学時代からの友人だという人が、人当たりの良い笑顔を向け、ラッピングされた景品の山を指差した。

「景品すごいんですよ! 安川のヤツ、ずいぶん奮発したみたいで」

「そうなんですか!?」

ぐふふと含み笑いをする彼に、「あとでのお楽しみです」ともったいぶって言われればよけいに気になったけど、クラッチバッグの中のスマホが震えて着信を知らせる。

忙しそうに立ち動いている周りに断りを入れガヤガヤとした会場を出ると、ロビーの片隅で画面を見てウンザリしながら応答した。

「……なに?」

『なにじゃないでしょう? お正月に帰ってきて以来、電話の一本よこさないで』

「子どもじゃないんだから。便りのないのはよい便りって言うじゃない」

『だったら、その『よい便り』はいつ聞かせてもらえるのかしら?』

私は電話の向こう側に届かないように嘆息する。これだから連絡を取りたくなかったのに。

「伯母さんがね、いい人がいるって言うんだけど、今度の連休とかには戻って来られない?」

「えっ? なにそれ。私にお見合いをしろってこと!?」

思わず大きくなった声に辺りを見回してしまった。さらに物陰へと引っ込んで、声を潜める。

「そんなこと、頼んでいないでしょ? 放っておいてよ」

『放っていたから、あなたは三十を過ぎても独りなんでしょう? 佐智が結婚してくれないと、巧巳(たくみ)にお嫁さんがこないじゃない』

「もしかして巧巳、結婚するのっ!?」





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