エリート上司に翻弄されてます!
君の帰りを待っている



気が付けば乾先輩の出張の日付になった。

彼が岡山へ移動するという噂は会社中に広がった。
しかし彼はそれを否定はしなかったみたいだ。

よって彼のファンたちの耳にも入り、彼女たちは嘆き悲しむことになった。


「(そんな話聞いてないって言ってたけど本当なの?)」


彼の口から真実をしっかりと聞いた身であるのに私の心は複雑だった。
どこかでこのまま彼が帰ってこないのではないかと不安になる。

あれから乾先輩とは一言も言葉を交わしてはいなかった。
彼があんなに怒ったのは私に告白したときぐらいだったかもしれない。

あの時は私は彼の気持ちを知らなくて、それは彼が黙っていたから当たり前のことだけど今回は違う。
乾先輩は既に私への気持ちを伝えていてくれたのに私の早とちりや勘違いで怒らせてしまったんだ。

でも、あれからも私のことを好きでいてくれたなんて信じられるはずがなかったから。
どんな気持ちで私に接してくれていたんだろう。

それにしても桐乃さんとの電話で伝えていたあの「好きだよ」の意味は一体……


「乾が岡山に移動って、まだ信じられないな」

「支店の強化とかそんなところなのかな」

「何事もなく帰って来ればいいけど」


色々な憶測が飛び交う中、彼は何も言わずに岡山へと出張に行ってしまった。
彼が帰ってくるのは5日後と聞いている。

その前にちゃんと話をしたら良かったのかな。
でも謝っても彼を傷つけてしまうだけなのかもしれない。

私が今すべき事ってなんなんだろう。




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