ドルチェ セグレート
クッキーとタルトと恋心
ちょっと硬めの歯ごたえで、ボリボリと音が漏れる。
休憩中、昨日買ったナッツクッキーを頬張っていたところ、ドアが開かれた。

「河村さーん。本社からお電話ですよー……って、めっちゃ大きな口でしたね」

ぱくっとクッキーを頬張った状態で、動きを停止する。
ドアからは、志穂ちゃんがドアの隙間から顔を覗かせ、目を丸くしてばっさりとそう言った。

いまさら恥ずかしがるようなキャラでもないか、と思う反面、どうやら乙女心もまだ持ち合わせていたようで。
んぐっと喉を詰まらせて動揺すると、サーモマグに入ったコーヒーを慌てて口に含んだ。

「わ、わかった。ありが、と……ごほっ」

トントンと胸を軽く叩いて返事をすると、彼女は苦笑する。

「河村さんって、なんか……いつも豪快ですよねぇ」

志穂ちゃんのクスッという笑い方は、たぶん小馬鹿にされてるんだろうなぁ、なんて感じてしまう。

まぁね。この子は私とは違うタイプだし。
ということは、彼女にとっても、私は対極に位置づけされてるんだろうと思うし。
だからきっと、休憩室とはいえ、大きな口を開けて、クッキーをひと口で食べちゃうことが信じられないんだろうな。

やけに冷静に解釈すると、さっきまでの羞恥心が薄れていて、平然と言葉を返していた。

「ま、それだけが取り柄っていうかね」

っていうのと、女の子らしくするのが似合わなそうっていうのとね。

席を立ちながら心の中で自虐的に付け足すと、自分で思っていることとはいえ、ちょっぴり悲しくなってしまった。

きっと、世の中の男性が求める女性像というのは、志穂ちゃんのようなふんわりとした雰囲気の可愛い子なんだろう。
でも、仕事では、この逞しさをかってもらえてるとは思うし!

そんなことを思いつつ、カウンターに出て電話の子機を手にし、声をワントーンあげた。
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