めぐり逢えたのに
出会い
私は「戸川のマリカ様」と言われて育った。

父は、戸川自動車の代表取締役社長、祖父は戸川自動車の代表取締役会長だ。そして、私の叔父は取締役副社長。

いとこの崇と咲のことは良く知っている。
小さい頃はよく一緒にディズニーワールドに遊びに行ったし、毎年夏は、軽井沢のおじいちゃんの家に一緒に何週間か泊まりに行くのが恒例の行事だったからだ。

おじいちゃんの家に行った時には、崇や咲とよく文句を言っていた。たまには軽井沢じゃなくて、カリブに行きたいね、って。
でも、おじいちゃんは、カリブは遠すぎるし暑すぎる、軽井沢が丁度いいんだ、っていつも笑っていた。

小学校の高学年になる頃から、崇や咲とはあまり会えなくなった。私は、女子大まで上がれる中学校に進学予定だったけど、崇と咲は、スイスの全寮制の学校に入っちゃったからだ。
しょっちゅう会えなくなって寂しかったけど、いいことが一つあった。夏休みになると、軽井沢の代わりにスイスに行くようになったのだ。

スイスがあんまりいいところなので、私も咲の学校に入りたい、ってパパに何度となく頼んでみたけど、パパは絶対ダメだって言った。私は一人娘だったし、こんなに早くからスイスに行っちゃったら、ママが悲しむだろう、って。

それ以外のことは、望む事はだいたい何でも叶えてもらってた。
< 1 / 270 >

この作品をシェア

pagetop