彼女のことは俺が守る【完全版】
「ありがとうございます。雅さんが居てくれて良かったです」


「そう?それならよかった。私も里桜ちゃんと色々話せてよかったと思うわ。篠崎くんが急に結婚するとかいうから驚いたけど、里桜ちゃんだから、篠崎くんも結婚しようと思ったのでしょうね」


「あの…私と篠崎さんの結婚のことどう聞いてますか?」


「偽装結婚だとは聞いているわ。同居でも同棲でも、ルームシェアでも、何でもいいけど、一緒に住むなら楽しんだ方がいいでしょ。篠崎くんは私のお墨付きよ。とっても優しいし真面目な人よ。だから、里桜ちゃんも安心して過ごしていいと思うわ」


 雅さんの言っている意味は分かる。


 たった二日しか一緒には居なかったけど、海斗さんの優しさは私にも分かる。自分が大事にされているのも分かるし、彼が偽装結婚を最初から言っていてくれなかったら、きっと私は勘違いしてしまうかもしれない。そのくらいに海斗さんは優しい。


「私もあの時で出会えたのが篠崎さんで良かったと思います。あの時、自分の中で起きた出来事を受け止められなくて、自分が壊れそうでした。でも、今は少しだけ前向きになっています」


 そんな私の呟きにも似た小さな声を聞きながら、雅さんは少しだけ遠くを見つめ、そして、私をしっかりと見つめると優しくこう言ったのだった。


「人間には辛いことがあってもそれを乗り越えられるだけの強さがあると思うの。でも、それは一人で乗り越えるよりも一緒に乗り越えてくれる人がいたらもっと早く乗り越えられるわ」
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