彼女のことは俺が守る【完全版】
「私って天才ね。これで篠崎くんも満足だと思うわ」


「可笑しくないですか?」


「全然。とっても可愛いと思うわ」


 雅さんの言葉を聞きながら本当に喜んでくれたら嬉しいとは思う。多分、篠崎海に私に対して何の感情もないかもしれない。でも、私は時間を経る度に存在が大きくなってくる。私を本気で助けようとしてくれるのなら、私もその思いに応え、篠崎海の求める偽装結婚の相手を演じようと思った。


「さ、そろそろ行かないと篠崎くんを待たせすぎだわ」


 そう言って、部屋を出ると雅さんが私を連れて向かったのは同じホテルの最上階にあるレストランだった。雅さんが高取さんに連絡をしていたのか、エレベーターを降りると目の前にあるレストランの入り口には高取さんが立っていた。そして、私の姿を見てニッコリと微笑んだのだった。


「雅。お疲れ様。海が里桜さんを待っている。里桜さんもお疲れ様でした」


「我ながらいい出来だと自負しているのよ。篠崎くんも喜んでくれるかしら?」


「それは間違いないだろう。さ、里桜さん。海が待っているから急いで…」


 食事をするとは聞いていたけど、私は二人っきりとは思ってなかった。高取さんも雅さんも一緒に四人で食事をするものと思い込んでいた。でも、それは私の思い違いだったみたいで、雅さんはニッコリと微笑むだけでその場から動く気配はなかった。

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