そんな結婚、あるワケないじゃん!
まさか、こんな事になるなんて……
『帰ってこなくていいから!』


その言葉を最後に母の既読ムシは続いた。
私の心配をする気配もなく、家族はすっかり羽田を信用しきってる。


「はぁ…」


コンビニの雑誌コーナーの向かい側で、私は大きな息を吐きだした。
部屋から程近いこの店に来たのは、「マトモな食材がないから買いに行かせて!」と羽田に頼み込んだから。


気の重いままお泊り用のスキンケアセットをカゴに入れた。
使いきりのシャンプーとコンディショナーも入れながら、チラリと探す下着。

生理用ナプキンと同じ棚に並ぶサニタリーショーツ。
その横に隠れる様に置かれてあるピンク色のレギュラータイプに目がいく。


(…これをカゴに入れたら、誰かの家にお泊まりをするんだって店員に気づかれるよね。羽田が一緒じゃないから彼氏ん家とはハッキリ確信できないだろうけど……)



「うーーん…」


悩んだ挙げ句、しっかりサイズを選んで放り込んだ。
ピンク色だけしか置いてないというのも、何だか頂けない話だ。


後は食材……と通り過ぎようとして、一番上の棚に並んでいたボディスプレーに気づいた。
『ソープの香り』の隣に置いてあるのは『フリージアの香り』。


珍しいな…と思いながら手に取った。
テスターに鼻を近づけると、ふわっと優しい香りが鼻の奥に広がっていく。



(あ〜〜、なんか癒されるぅぅ……)


いつもならペソの匂いに癒されてる時間だけど今日はいないし、おまけに要らない緊張感は高まる一方だし。


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