雪国ラプソディー

束の間のひととき


車の中は、長時間の直射日光によって蒸し風呂と化していた。カーエアコンをフル稼働させて、温度が下がるのを待つ。何度ハンカチで額を拭っても、にじみ出てくる汗にうんざりしてしまう。


「さすがに腹減ったな」


小林さんの言葉を聞いて腕時計を見ると、既に昼を過ぎている。私たちは、思いのほか水族館に滞在していたようだ。


「これから営業所の方に向かうけど、途中で美味い蕎麦屋があるんだ。そこで昼飯にしよう」

「蕎麦ですか?!」


さっきまで暑さにへばっていたけれど、ごはんの話を聞いて急に元気になった。水がきれいな場所は美味しい蕎麦が作られるという。この地方に流れる川の輝きを思い出し、まだ見ぬ昼食が楽しみになった。

そんな私を見て、小林さんは呆れたように言う。


「浅見ってさ、幸せだよな……」

「小林さんは、もっと地元に感謝すべきですよ!」


こんなに空気がおいしいのに! とまくし立てると、そうだな、と少し笑っていた。

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