雪国ラプソディー

「ああ面白かった……!」


久しぶりの水族館に、私はすっかり魅了された。

ガイドブックに載っていた、深海魚に特化したコーナーはとても興味深くて思わず長居してしまったし、ラッコが一生懸命エサを食べている姿は身悶えするほど愛らしかった。

水槽がトンネルになっている場所では、エイがゆっくりと優雅に真上を泳いでいく姿を見て、束の間の現実逃避を楽しんだ。

そんな風に好き勝手見てまわる私に対して、文句ひとつ言わず付き合ってくれた小林さんは、やっぱり優しい。本当は私と水族館だなんて嫌だったかもしれないというのに、まったく表情に出ない人だ。


駐車場へと続く道を歩いていると、隣で小林さんが話しかけてくる。


「浅見ってペンギンが好きなんだ」

「え?! 何で知ってるんですか?」

「……それ。袋からはみ出てる」

「あっ」


ペンギンの散歩タイムに運良く遭遇できて、すっかり虜になってしまった私は、お土産売り場でこっそりぬいぐるみを買っていたのだ。羽根をパタパタ動かしながらよちよち歩いてくるあの姿が、目に焼き付いて離れないほどかわいくて。
どうやらレジ袋のサイズが合わなかったようで、半分顔を出してこっちを見ている。


「いっ、いつもは買わないんですけどね! いつもは!」


こっそり買ったつもりが思いっきり知られてしまい、私は背中に〝その子〟を隠して必死に言い訳をする。


「今度はペンギンクッキーでも探しといてやるよ」


そんな私を見て目を細めると、小林さんは先に歩いて行ってしまった。


(うう、いい年して恥ずかしい……。しかも〝今度は〟ってどういう意味?!)


私は、いつでも心をかき乱す張本人のもとへ、小走りで向かった。


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