雪国ラプソディー

乙女心発動中



(うわあ、ここもいいなあ)


その日の昼休み。私はグルメ検索サイトをカチカチと眺めていた。和食に中華にイタリアン、どこも美味しそうな写真が掲載されている。


(小林さんは和食が好きそう。いや、でもやっぱり中華かな)


小林さんが出張でこっちに来るなら、今度は私がもてなしたい!と思っていた私は、さっきの電話で勇気を振り絞って食事に誘ったわけだけれど。


(まさか即オッケーをもらえるとは……)


思い出すだけでにやけてしまう。


・・・・・


用件は言ったとばかりに電話を切られそうになったので、私は慌てて引き留めたのだった。


「こここ小林さん」

『ん?』


にわとりか!と自分にツッコミを入れつつ、落ち着こうと胸を押さえて深呼吸した。
言うなら今しかない。


「あ、あのっ、こっちに来たら、ご飯食べに行きませんかっ?!」


一瞬、間が空いた。
私にとっては永遠のように感じた沈黙。思わずぎゅっと目を瞑る。


『……いいよ。楽しみにしてるから』


詳しい日時が決まったら連絡すると言われて、通話は終了した。


・・・・・


(断られるかと思ったのに……)


たった一回会っただけの私を、小林さんがどう思っているかなんて分からない。
それでも、例え社交辞令だったとしても、こっちに来ることを事前に教えてくれたのは、事実だ。
もしかしたら、少しは思い出してくれていたかもしれないと思うと、どうしようもないほど舞い上がってしまう。


「あああ、でもお店どうしよう」


そんな嬉しさを噛みしめつつも、私は頭を悩ませる。

そしてその後、お約束のように機嫌の悪い村山さんから電話がきたのだった。


『僕も行けると思ってたのに。何で小林さんだけ……』


彼のとんでもなく長い愚痴を聞かされても平気なくらい私の心は穏やかだったことは、内緒にしておこうと思う。


< 67 / 124 >

この作品をシェア

pagetop