雪国ラプソディー

紙袋の交換

・・・・・


「ふう、できた……」


私は首をこきこき鳴らす。ずっと同じ姿勢でいたため、凝ってしまっていたようだ。

久しぶりに小林さんに会えて、すっかりやる気がチャージされた私は、無事に本日の業務ノルマを達成することができた。これで〝せっかくの再会の日に残業〟という悲劇だけは回避できたはず。


時計を見ると、定時まではあと30分というところ。小林さんは会議と言っていたけれど、終わっただろうか。そう思いながらホットティーを飲んでいるときだった。


「浅見さん、お客さんがお見えだけど」


給湯室から戻ってきた相川さんが、そっと私に耳打ちする。


「私に、ですか?」


今日は来客の予定なんてなかったはずだ。不思議に思いながら入り口へ向かうと、コートを着込んだ小林さんが立っていた。


「小林さん?! どうしてここに」


内線ではなく、直接秘書課まで来たことに驚いた。まだ定時までは時間があるのに、どうしたんだろうと思いながら聞くと、小林さんの眉毛が少し下がった。


「悪い浅見。緊急で戻らなきゃならなくなった」

「……え!」

「ちょっとトラブルがあって」


小林さんは、営業所へ帰るためにコートを着ていたのだと知る。話したいことはたくさんあったけれど、引き留めるわけにもいかない。営業所は少人数で回しているため、こういった緊急時に弱いことは、私も知っている。


見送ろうとして、私はあることを思い出した。


「小林さん、先歩いててください。すぐ追いつきます!」

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