浅葱の桜

分岐点

––––元治元年五月下旬



「佐久ちょっといいか」

「はい」



山崎さん? 部屋に来るなんて珍しい。


障子を開けるとそこには山崎さんだけでなく土方さんの姿もあって。


それだけでただ事ではないことだけは察する。


二人を部屋の中に促すと私は部屋の隅に座った。



「珍し……くもない組み合わせですか。どうかしたんですか? お二人がそろってここに来るなんて」

「……お前に頼みがあってきた」

「…………」

「へ?」



私に頼み? 土方さんが?


「最近、攘夷志士の中で不穏な動きが出てきてる。まだ確証がねぇから動けやしねぇんだがな。

だから……お前に、その証拠を集めてきてほしい」

「私に」



務まるのかな?



「無理っちゅうならまた別の作戦を考える。やから、出来んなら出来んて断ってくれて構わんからな?」



山崎さんはそういうけど、それがかなり厳しいから私に頼ってきてるんだろうし。


それに、せっかく恩を返せる可能性があるのにそれを無下にするわけにはいかない。



「分かりました。やらせていただきます。その方法を教えてください」


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