四百年の誓い
鈍色の午後
***


 優雅との逢瀬から数日後。


 美月姫は大学からの帰り道、寮までの道のりを歩いていた。


 いつもは自転車だが、今日に限ってタイヤがパンクしてしまい、応急処置では直せず、自転車屋さんに修理に出す羽目となったのだった。


 初夏の気候のよい一日で、大学まで一キロちょっとの道のり、久しぶりに歩いてみることにした。


「雪みたい」


 北海道大学の構内には、ポプラの木がたくさん植えられている。


 ポプラの種が初夏に舞い落ちるのだが、それは綿のようなものに包まれていて、雪のように舞い散る。


 白い綿がふわふわ風に舞っているのを眺めながら、美月姫は寮へと向かっていた。


 大きな通り沿いは車の通行量がおおくて騒がしいため、一歩内側の住宅街を歩いていた。


 古い民家が多数残された住宅街。


 札幌駅から近いにもかかわらず、この一角だけは静けさに包まれていた。


 時刻は午後四時頃。


 この日は早く授業が終わり、さっさと家に帰って、ゆっくり優雅と電話でもしようと考えていたのだった。
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