サヨナラケイジ
1、

それは、財布のように見えた。


駅前にぽつんとあるベンチ。

夏の夕暮れ。

学校帰りにコンビニに寄ってから帰るのが、私の日課。

何気なく目をやった白いベンチの上に、なにか置いてある。

赤い色が目立っていた。


なんだろう?


近寄ってみると、それはまさしく財布そのものだった。

手に取ってみると、赤色の二つ折りで若い子が持ちそうな感じ。


「・・・・・・困ったな」


キョロキョロとあたりを見回してみる。

今にも落とし主が走ってきそうなのに、さすが田舎町、誰の姿もないし。

ここから最寄りの交番は、目と鼻の先。

持っていけないことはないけれど・・・・・・。


「あ、門限っ」


もう6時半を過ぎているはず。


ヤバいなぁ・・・・・・。


私の住んでいる寮では、異様に門限が早く、かつ厳しいことで有名だ。
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