鷹司家の使用人
この5年間の日々を思い出して嫌気がさす。
だから、二度と戻りたくはないのに、
「いたぞ!囲め!!」
「嘘でしょ…。」
前から現れた追っ手に道を阻まれ、行く手を塞がれてしまった。
後ろからだけの追っ手だけだと思い込んでいたが、いつの間にか回り込まれていたようだ。
ああ、最悪。
知らない内に、私の逃走ルートは制限されていたんだ…。まんまとそれにハマってしまう私はなんて馬鹿なんだろう。
どうしたって、私はあの人から逃げ切れないのね。
「観念して、大人しく戻るんだ。」
ジリジリと詰め寄る輩に、無意識に唇を噛み締める。
どうすればいい。
どうすればこの状況から打破出来る?
普通に考えても、この人数相手に私は不利なのは目に見えている。だけど、捕まって戻されるのだけは絶対に嫌だから、
「いいわ、最後までやってやる。」
その言葉を言い終わる前に、私は正面にいる敵に向かって走り出した。