イジワル同期とスイートライフ
「たいへん申し上げにくいんだけどね」

「まさか?」

「そのまさかなの」



生理なのだ。

軽く飲んだ後で、泊まりに来る流れになったときに言おうかとも思ったんだけれど、かえって失礼な気がして言えずにいた。

当然ながら久住くんは、がっかりした声で正直に「マジかよー」とぼやき、やけになったみたいに私をぎゅっと抱きしめる。



「最初に言えよ…」

「言ったら、来るのやめた?」



目の前にある胸から、彼の鼓動が伝わってくる。

穏やかで心地いい振動。



「…んなこと、ねーよ」



髪に落とされる、優しい唇の感触。

「おやすみ」とささやいて、久住くんは枕元のリモコンで部屋を暗くした。

寝つきのいい彼の、規則正しい呼吸がすぐに始まる。

それを聞きながら、私はしばらくの間、暗闇で目を開けていた。


この関係は、いったいなんだ?



 * * *



「あの久住くんて子、失礼じゃない?」

「えっ、あ、はい」



5年上の幸枝(ゆきえ)さんが、席に着くなりそんな暴言を吐いたので、私はぎょっとして、ついいい加減な返事をしてしまった。

まああの会議に出ている人は全員、彼女の久住くんに対する、決して好意的とは言えない態度に気づいているだろう。

久住くんにというより、海外営業部に対してのだ。



「あっ、ごめん、乃梨子(のりこ)ちゃんの同期なんだっけ」

「いいですよ、なにかありました?」

「国内のプレゼン資料を修正して、確認をお願いしたらね、呼び出されて赤入れられたわけよ、目の前で」

「ああ…」

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