愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「ちょっと!待ちなさいよ!」

「エミリー…やめて…」

「でも……」

私は、さっきの子達に食ってかかりそうなさゆみを制した。



「きっと、CLOWNのファンだよ。」

「そうかな…でも、なんで…」

「なんでって…そりゃあ、この前のことがあったからじゃない。」

「この前って…?」

「あんた、マジで言ってる?」

さゆみが怒ったような声を出したから、私はびっくりしてしまった。



「え…!?」

「もうっ…あんたって鈍いんだから…!
良い?あ……」

さゆみが何かを話しかけた時、開場が始まった。



「……続きは後で話そう。」

「う、うん……」



少しずつ前の方に移動して…



(わぁ…!)



中に入ると同時にみんなが猛ダッシュでステージの方へ走り出していく。
一応席はあるけど、みんな自由席だからそうなるのも当然だ。



「キラさん、どこかな…あ!いた!」

さゆみが指さしたのは、前から三列目あたりの席だった。
すごいよ、今回もステージからすごく近いよ。
前で見た方が楽しいってことはわかってるけど、あんな場所じゃ、瑠威にもすぐにみつけられてしまう。
恥ずかしくて、どんな顔して見てたら良いのか、わからないよ。
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