熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
やがて――みさきちゃんの姿が見えなくなってから約10分後、遠くに比嘉くんの姿を発見することができた。

やりぃ!

ラッキーにも友達連れではなく、一人で登校している彼を見たとき、運があたしにめぐってきていると思った。

これも、お守り代わりにバッグの中に忍ばせた純愛の神さま・魚住とと先生の直筆サイン入り小説本のご利益にちがいないと、あたしは思ったし、確信していた。

いつもなら無理なことだけど、今日は神さまのおかげで、比嘉くんに話しかける勇気が、胸の奥から少しずつだけど湧いてくる。


あたしはだんだんと近づいてくる彼の姿を見据えると、話しかけるタイミングを見計らって、自販機の陰で身構えた。

20メートル……

15メートル……

ハァ、ハァ、ハァ…

運動したわけでもないのに、息が荒くなってるのが分かる。

10メートル……

つつぅー…

おでこに、こめかみに、首筋に、背中に、胸の谷間に汗が流れていくのも分かる。

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