イジワル御曹司と花嫁契約
偽りの婚約は船上で
暗い夜の海に悠然と浮かぶ巨大な船。


その圧倒的な存在感に尻込みしてしまう。


慣れないハイヒールを履いたせいで、時間ぎりぎりの到着になってしまった。


飛行機の荷物検査ばりの厳重なチェックを受け、SPのようなスーツ姿の屈強な男たちが立ち並ぶ搭乗口でチケットを改札機に通した。


それから空港のゲートのようなガラス張りの長い通路を進んで行くと、船のドアに繋がっていてようやく乗り込むことができた。


なんとか間に合うことができたと安堵したのも束の間、豪華客船の中はまるで夢の国のようだった。


モデルのようにスタイルのいい美男美女のスタッフが、弾けるような笑顔で接客をしている。


目が眩むような照明と軽やかな音楽。豪華な船内は、まるで映画で観たラスベガスカジノのようだった。


口をポカンと開け、呆然としながら船内を歩くと、招待客の服装の派手さに更に驚かされた。


女性はロングドレスやイヴニングドレスが殆どで、髪も美容院でセットしているのか、とてもお洒落で華やかだ。


男性もタキシードや燕尾服が殆どで、普通のスーツを着ている人はどこにもいない。
< 12 / 280 >

この作品をシェア

pagetop