四門メグへの手紙~魔女の瞳番外編~
五枚目
冷たい海風が吹き抜けます。

海沿いの外人墓地。

流れる雲が、時折月明かりを遮ります。

「……」

私は風にスカートの裾を、長い黒髪を舞い躍らせながら、周囲の気配に気を配ります。

二度目の実戦。

相手は闇に乗じての襲撃を得意としている筈です。

一瞬の油断も許されません。

と。

「そう気を張るな、お嬢ちゃん」

獣態から獣人態へ。

姿を変えながらジルコーが私の正面に立ちました。

「緊張しなくてもお前さんの身の安全は俺が必ず守る。お嬢ちゃんは敵が姿を現したら、自分の得意なのをぶち当てる事だけ考えればいい」

「え…」

ジルコーのその頼もしい言葉に。

私は不覚にもドキッとしてしまったんです。

…顔が赤くなったりしたんでしょうか。

「んー?」

からかうような笑みを浮かべて、ジルコーが私の顔を覗き込みます。

「な…何ですか…?」

「んむ…まぁ確かに強くてハンサムで博識だ。惚れるのも無理ないがな」

ニヤニヤ笑いながら呟くジルコー。

「ウブなお嬢ちゃんにゃ俺は刺激が強すぎるかもな。俺の交尾は激しいぜ?」

「んなっ…!」

今度は自分でもはっきりわかるくらい、顔が赤くなりました。

「なな、何言ってるんですか!ジルコー不潔です!」

「はっはっはっ!」

笑うジルコー。

その笑いが突然止み…。


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