オトナの恋は強引です!
久しぶりの実家。
祖父の代から続く、温泉旅館「清水」海沿いにあって、
古くからの日本庭園と露天風呂。が自慢。
本館は昔ながらの木造だけど、
奥の新館は5階建。5階の部分の浴室からは海が見渡せ、気持ちいい。
海の幸ももちろん楽しめる。

本館の裏口に周り、ただいま。と声をかけると、
「お嬢さん、おかえりなさい。」と、仲居さんや、古くから勤めるおじさん達に声をかけられる。
厨房で、顔なじみの板前さん達にも挨拶をしてから、
帳場を覗くと、両親と、兄夫婦の顔があった。
宿はチェックイン前なので、少し、のんびりしている。
まあ、夕方はいつも戦場だけどね。
「サクラちゃん。綺麗になって。」と着物姿の若女将。
大げさな義姉(5歳年上。31歳)に声をかけられ、抱きしめられる。
「はいはい。お正月にも会ったでしょ。」とクスクス笑うと、
「オンナっぽくなったわ。」としげしげと見られる。
「オトコでもできたか?」と笑う下品な兄(瑞樹 みずき30歳。)は無視して、
「ただいま。夜勤明けなの。寝ても良い?」と母に言うと、
「相変わらず、忙しいのね。明日も泊まれるの?」と聞くので、
「2連休だけど、明日のんびり帰る事にする。」と言うと、
「いろいろ話があるのに。」と、私の顔を見る。
「聞きたくなーい。どうせ、帰ってこい、か、お見合いの話でしょ。」
と私が笑うと、みんなも声を出して笑った。
「美味い魚を食わせてやる。」と父がポツリと言うので、
「楽しみ。」と顔を見ると、顔を伏せて、いなくなってしまった。
「お父さん張り切っちゃって。」と母は笑う。
いや、よくわからん。と私は思いながら、あくびが出る。
「じゃ、おやすみー。」と私が歩き出すと、母がいそいそついてくる。

元気だった?ちゃんと食べてる?
などなど喋り続ける母に適当に返事をしながら、
長い廊下を抜け、
自宅部分に足を踏み入れると
懐かしいいろいろな匂いに包まれる。
まあ、
ホッとするかな。

「お風呂に入るでしょ。」と母がパジャマを取りに行きそうなので、
「女将さん、仕事して。1人でできる。」と笑って、追い払う。

自宅の温泉の風呂に入って、手足を伸ばす。
ヒノキの匂いがやっぱり良いね。
「はー。」と大きくため息をつくと、
胸に付けられたキスマークが残っていた。
やれやれ。
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