将来、あなたたちは離婚します。
迷い
 私は、電気も付けず薄暗い部屋でうずくまっていた。あの日から、何ヶ月経ったのだろうか。今でもあの機械的な声が蘇って来る。「将来、あなたたちは離婚します。」機械音ははっきりとわたしたちにそう告げた。理解したくなかった。さっきの女の人もこう言われたのだろう。彼の様子を伺うことも忘れ、ただ文字が映し出された画面を見つめていた。フリーズするとはこういうことを言うのだろうか。完全に自分で思考を止めていたようにも思う。しばらくして、彼が私の手を取って「絵梨香、帰ろう。」と少し寂しそうに微笑んだ。
 
 施設を出た後、何を話せばよいか分からなかった。彼はどう思っているのだろう。このまま別れるのか。こんなテスト受けなければ良かった。いろんなことが頭の中を巡っていた。気が付くと最寄りの駅に着いていた。電車の中でも沈黙は続いた。このまま終わってしまう雰囲気すら漂っていた。さっきまであんなに好きだったのに。今だって嫌いになった訳じゃない。ただ、よく分からない感情に押し潰されそうだった。
 電車を降り、改札を出たところで、彼が口を開いた。「絵梨香、少しだけ話してもいい?」私の中では、まだ何もまとまってはいなかったが、力無く頷き彼の後に着いて行った。

 わたしたちは小さな公園に来ていた。「絵梨香はどうしたい?」ベンチに越しかけて彼は聞いてきた。「正直、すべてがまだよく分かってない。」と俯きながら答えた。「そうだよな。ごめん。」そこからまた少しの沈黙が訪れ、辺りはすっかり暗くなっていた。「送るよ。」彼の一言でわたしたちは歩き出した。家に着くと「また落ち着いたら連絡する。」と告げて、彼は帰って行った
。家に入った途端、玄関に座り込んだ。今まで辛うじて私を動かしていた何かも、ついに切れた。そして、何も考えずに眠りに着いた。
 目が覚めると夜が明けて少し明るくなっていた。思い体を起こしてシャワーを浴び、ベッドに倒れ込んだ。

 数ヶ月経ち、彼からの連絡はまだない。幸いにも、仕事にはきちんと切り替えて向かえている自分には少し驚いた。もしかしたら、何かをしてないと考えてしまうからかもしれないが。休みの日は、1日部屋で考えることがほとんどになったが、だんだんと、少しずつ自分の気持ちに向き合えるようになっていた。
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