恋色流星群

5#直生side

 

携帯を耳にあてて。
嬉しそうに笑うチョコの横顔に、俺のほうが癒された。


並んで歩けば、深夜の廊下では嫌でも会話が聞こえてしまう。
申し訳なくて、反対側を覗けば。

彼女のいない営業企画部には、まだ明かりが点いていた。



「いいって、寝てな?」


チョコの小さな声がまだ耳に届いて、その明かりの中を目を凝らす。

こちらの窓沿いのキャビネに立つ、彼と目が合った。





ああ、もう会ったか。



そう浮かぶのと同時に、間髪入れず彼が持っていたファイルを置いて、こちらへ向かってくる。
一度も、あの眼光鋭い瞳を、逸らさずに。




「あれ、浅山さん。お疲れ様です。」

廊下へ出てきた浅山に、先に声をかけたのは。
いつの間にか電話を終えた、チョコだった。



チ「遅いですね。一人っすか?」

浅「瀬名、今日休みですよ。」


隣で、チョコが。
自分の問いを流されたことではなく、彼の気配に表情を変えたことを感じた。



チ「先、行ってます。」

すぐに柔らかい表情を取り戻して、機転を利かす。
ちゃんと浅山にも小さく頭を下げて、チョコは暗い廊下を歩いて行った。



浅「インフルエンザです。月曜からずっと。」

浅山は、俺から目を逸らさないから。
そんなチョコの柔らかさにも、気づかない。


直「知ってるよ。」

浅「初めてです、あいつがこんな休むこと。」

直「大丈夫だよ、土曜の打ち合わせには出て来るから。」



瞳の中で燃える苛立ちが、濃くなった気がした。

だけど、俺だって。
今更引き下がるわけには、いかない。



浅「何かしたんですか、あいつに。
日曜は休日出勤してて、月曜の朝には具合悪くなってたんです。
日曜の夜、何かあったってことでしょう。」


直「様子に気付けなかったことは、謝るよ。
けど、浅山に話さないといけないことは何もないから。」


これからも、と。
添えようと思ったけど、憤りを煽るだけだと飲み込んだ。



浅「行かないんですか、あいつのとこ。一人暮らしで寝てるんですよ。」


直「俺が仕事放って行ったって、彼女は喜ばないでしょ。」


浅「俺が行けないから、言ってるんですよ。」

直「そもそも、行かせないから。」
 

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