向日葵の天秤が傾く時
黄昏ゼクス
真っ白い部屋に私と貴女



スースー、スースー

カチコチ、カチコチ


規則正しく刻み響く

呼吸する音と時計の音


ス、スー、ス………

カチ、コ、カ………


貴女の呼吸と時計の音が止まる時

私は壊れ、世界は停止する



「衢肖さん。」



卿焼は呼んだ、屋上の手摺に凭れかかり一人佇む巫莵を。


夕陽が照度差幻惑よろしく逆光で表情が見えない上に、呼び掛けにも応えてくれない。



「所長から聞きました、4年前のこと。」



近付いて分かる、巫莵の体が小刻み揺れていることに。



「皆、断固戦うって張り切ってます。………だから…、戻りましょ。戻って作戦練りましょ。」


「……所長って凄いですね。」


「え?」



巫莵は動く気配無く、その代わりポツリと呟いた。



「私の言葉は誰も信じてくれなかった。支店長に限ってあり得ない、先輩も優しいって。なのに所長は初対面の私の話を信じ、最初から最後まで疑わずに聞いてくれた。こんな迷惑だって皆が信じてくれるのは、所長の人徳ですね。」



あの時は薔次の不思議そうな顔に救われ、今も薔次によって救われている。


だから屋上に留まっていられる。
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