「映画、ダメになっちゃいましたね……。ごめんなさい」


結局、予約した回の時間には間に合わなかった。

「いいよ、連れ出したのは俺だし。また今度の楽しみが増えただけだ」

小野原さんは、そう言いながら、ナビをチェックする。

「これから、どうする?ここから近くに、水族館はあるけど」

食事をするには少し時間が早い。

「はい、行きたいです」


車はゆっくりと発進した。

こんなダメな私でも受け入れると言ってくれた彼の言葉が、胸の中を温かくする。

こうして小野原さんの隣にいると、とても安心する。

それは、単に助手席のシートが心地よいから、というだけではないことに、私は気付いていた。




この人は大人で。


私は年ばかり積み重ねた未熟者で。


この胸にかすかに沸き起こってくる感情が、これからどんな形になるか、分からないけど――

でもいつか、この人の隣に立てるような、強い人間になりたいと思った。



雨はいつの間にか、穏やかな夕立へと形を変え、雲間から少し陽が射していた――。