どん底女と救世主。


宴会…。

そう言えば、今日は大手製薬会社の創立記念パーティがあるんだっけ。


大きな顧客であるその製薬会社様は、うちのホテル自慢である国際規模の会議やパーティでも使われるバンケットホールを5年ごとの記念パーティで毎回使用してくれる。


当然、サービス責任者である勝は大忙しだ。

確かに。今日なら、あのマンションに行っても勝と鉢合わせする可能性は低い。


一応気を使ってくれていたらしい課長。


部屋を貸すと言ってくれたり、わざわざ荷物を一緒に取りにいこうとしてくれたり、勝の動向を気にしてくれたり。


意外とこの人は優しい人なのかも、と失礼にも感心していると、課長はいつの間にか目の前のソファから立ち上がっていた。


大きなテレビの横にある木目調でお洒落なチェストの上に置いていたらしい財布をズボンの後ろポケットに突っ込み、鍵を手に取ると、



「いいから行くぞ」


そう言い残し颯爽と玄関へ向かって行ってしまう。


え、もう出発?


心の準備が出来てないのに…!


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