どん底女と救世主。
振り返りもせず前へと進む背中を慌てて追いかけ部屋を出ると、課長の待つエレベーターに飛び乗った。
深山課長は脚が長いから一歩一歩のリーチが違いすぎて、すっかり息が上がってしまう。
でも課長って、こうやって見るとやっぱりスタイルがいいな。
濃いグレーのカットソーにチノパンと言うシンプル過ぎる格好なのに、なんだか雑誌の中から飛び出て来たみたいだ。
オーラもあるし、黙ってると格好いいのにな。
今まで恐怖で直視出来なかった課長の魅力を再認識している間に、エレベーターは1階のエントランスへとたどり着いていた。
うわあ、立派なエントランス…。
昨夜の記憶はさっぱりない私は、きっと昨日も通ったはずのエントランスに驚く。
大理石の高級感あふれるエントランスは、今まで私の住んできたマンションとは比べものにならない。
マンションを出て見上げて見る。
結構高いな…。何回まであるんだろう。
軽く30階くらいはありそうだ。
課長の部屋は12階だったけど、部屋も広かったし、リビングとベッドルームは別で、それでいて部屋が余ってるなんて。
さすが、役職持ってる人は違うな。