宛先は天国ですか?

1.





「…ねむい、疲れた、もう帰りたい…」

ぐでっと机にもたれ寝そべると、目の前にいる人物がつんつんとわたしの頬をつつく。

「起きてー、眠い気持ちは十分に分かるけども」

ふわぁとあくびをしながら、むにっと指で思い切り頬をついてきた。

続いて容赦なく頭をぐりぐりとする彼女は、高校で初めてできた友達の香山 璃子である。


そもそも、特殊…といっても普通科がないだけなのだが、この学校に同じ中学校の人などいない。

ほとんどの人が、誰か友達と「一緒に行こうね」という口約束もせず、1人単独で入学してきている。

人間関係はゼロからスタート、初めからいがみ合う人たちもいない。


ほら、正直、同じ中学校の人がいると、もうすでに好き嫌いが出来上がっていて嫌だというか。

人と仲良くなる上で面倒くさいでしょう。

この学校にはそういうものがほとんどない。

ほとんどと言ったのは、ごく稀に同じ中学校や姉妹で入ってくる人がいるからだ。

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