宛先は天国ですか?
ぐっと伸びをして机に伏せると、璃子がぐりぐりする手に力を込めた。
「起きて起きて、写真撮っちゃうよー」
わたしの頭上でスマホを起動させて、ふふふと怪しく笑う璃子。
ぱっと顔を上げると、真上にいたのか璃子の顎に思い切り頭が当たる。
「〜〜っ、璃子、ほんと写真はやめてよ」
頭を抑えながらそう言うと、璃子は涙目になりながら顎を抑えた。
そうしてベーっと下を出して、
「暖々の石頭!顎がわれる!」
わたしの頭を軽く小突いて、スマホをポケットに滑り込ませた。
周りからくすくすと笑いをこらえようとする声が聞こえてくる。
「朝から元気だなぁ、2人とも」
ぽんぽんとわたしと璃子の肩を叩くのは、隣の席の高瀬 環奈ちゃん。
ぱっちりとした目を細くして、綺麗な黒髪を揺らしている。
…相変わらずの美人である。
環奈ちゃんは俗に言う黒髪美人というやつで、クラスの中でも人気がある。
…クラスメートはほとんど女子だが。