肉食系御曹司の餌食になりました

私は毎日似たような暗い色味のパンツスーツを着ているけれど、お洒落な智恵は女性らしい色とデザインのスーツを取っ替え引っ替えしているのに。


こっそり入ってきたつもりのようだが、部長に「杉森さん、時間は守るように」と叱られて、「すみません」と謝る智恵。

自分の席にショルダーバッグを置くと、落ち込んだ顔をするのではなく、なぜか嬉しそうに微笑んでいた。


いつもと違う親友の様子に首を傾げつつ、朝礼を終えると仕事に取り掛かる。

パソコンのマウスに手をかけたら、ポケットの中でスマホが震える。

仕事用としても使っているスマホなので、取り出して確認すると、支社長からのメールだった。

件名は【雪とガラスのマリアージュ企画】で、【亜弓さんにお願いしていた施工業者との契約書、図面、見積書を支社長室まで持ってきて下さい】という内容だった。


一緒に進めている企画には『雪とガラスのマリアージュ』という綺麗なタイトルが付けられ、大通公園八丁目を自社製品のガラスでデコレーションする計画が着々と進行中。

発光板ガラスで小路を造り、その先に開放的なチャペルふうのステージを設けてひと組のカップルに挙式してもらう。

ガラス板の設置等は建築関係の施工業者に依頼していて、その仕事は私が担当するようにと、支社長に言われていた。

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