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支社長がアルフォルトに現れた日から一週間ほどが経つ。

私と智恵は事業部の全体会議を終えて会議室を出たところで、廊下を歩きながらの話題はといえば支社長のことだった。

「支社長、あれから店に来ないの?」と智恵に言われ、「しっ」と人差し指を唇に当てる。


「そういう話を会社でしないで。
誰かに聞かれたらどうするのよ」


智恵には店での一件をメールで教えてある。その続編を聞きたくてウズウズしているようだけど、社内ではやめてほしい。

それに次の私のステージは今日なので、あれから支社長がアルフォルトに通っているのかなんて知らないよ。


"店"という単語を避けて「最近、支社長を見てない」とだけ答えた。

自分で言って、そういえばここ一週間ほど、支社長の姿を見ていないことに今気づく。

東京本社に長めの出張だろうか?と考えていたら、智恵がニヤニヤした目を私に向けた。


「気になるの?
会いたいな〜って思ってる?」

「怒るよ」

「はいはい、亜弓はこういう話題が好きじゃないもんね。まったく、可愛らしさが足りないな」