夜の甘やかな野望
7.
*
あれから毎日のように倫子の家に帰っていた。
職業柄、変則的な時間に帰るのだが、それでも倫子が食事の用意をしてくれるのに、嬉しいながらちょっと心苦しかった。
なので母親から、夕食を食べにいらっしゃい、と電話があった時は、倫子さんに断った上で、遠慮なく食べに行った。
「宗雅に理事長の職を譲ることにした」
「あー、そうらしいね」
和やかに母親と夕食を済ませた後、会食から帰ってきた父親と一緒に紅茶を飲む。
「おまえも、そろそろ足元を固めないとな」
「うん、そうだね」
父親が帰ってきたなら、さっさとお暇したいと思いながら、いい加減な相槌を打つと、紅茶を注いでいた母親が顔を輝かした。
「やっとたーちゃんも気持ちが固まったのね。
莉奈さんにいつ言うの?」
宗忠はフィナンシェをくわえたまま、固まった。