夜の甘やかな野望


「じゃあ、今夜、寄るね」


にっこり笑って、さらっと言う。


倫子の目が若干泳いでいる。


これは照れている証拠。


「夕食は作りませんよ」


つっけんどんな口調。


「うん。
 病院を出る時に電話する」


宗忠は緩む口元を引き締める。


こんなに目の前の世界が明るく感じるのは久々だ。


うん、本当に嬉しい。


フロントガラスで朝日がきらきらするのを見ながら、宗忠は微笑した。
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