目が覚めると、直人の整った顔が視界に飛び込んできて、眠気も一気に吹き飛んだ。コンマ数秒で状況を把握し、心を落ち着かせようと必死になる。

 でも、なにも身にまとっていない状況で、冷静さなんて早々取り戻せるものでもない。昨夜のことが自然と頭に蘇って、恥ずかしさで泣きそうになる。

 それでも下手に動いたら、すぐそばで眠る直人も起こしそうで、私は体を硬直させたまま悶々としていた。とりあえず意識を他に飛ばそうと、はじめて見る直人の寝顔をこっそり堪能しよう試みる。

 影を作りそうな、長い睫毛は瞳は閉じられている分、より際立っている。薄くて形のいい唇にすっと通った鼻筋。やっぱり直人は綺麗な顔立ちをしているな、と改めて実感した。

 私、この人と結婚するんだ。……結婚。その言葉に頬が熱くなって、心拍数が上昇する。しかし、そこで私は大事なことを思い出した。慌てて時計を確認して、その時刻に血の気が引く。

「直人、起きて!」

「ん、晶子?」

 寝起き特有の擦れた声で名前を呼ばれ、胸が高鳴る。無意識にか、直人は私を抱き寄せるので、このまま腕の中にいたい気持ちを振り払い、心を鬼にして再度、起きるように告げた。すると、その唇はあっさりと塞がれる。

「もう少し」

「駄目。お見舞い行くんでしょ」

 寝かせてあげたいのは山々なのだが、そうもいかない。先ほどより強い口調で告げると、さすがに直人の目も見開かれた。

 病院に行く、と約束した時間が迫っている。こうして、はじめて二人で迎えた朝はバタバタして、余韻に浸る間もなく慌ただしいものになったのだった。