『When did you fall in love with me?』

 少し癖のある英語で画面の中の女性は相手に尋ねた。その発言が気になったのは、どうやら俺だけのようで、ちらりと横目に、隣にいる彼女を見ると、相変わらずものすごい集中力で映画に釘づけだった。

 これはいつものことなのでしょうがない。それでも、以前とは違って自分たちの間に距離はなく、寄り添うようにくっついて座っている。そして彼女の手の上に自分の手を重ねている。

 ついさっき、たしか主人公の親友である女性が呟いた発言を頭の中で繰り返して、俺はなんとなく、隣にいる彼女とのことを思い出していた。


『もしもあなたと結婚するなら、ひとつだけ条件があるんです』

 そう彼女が切り出し、とんでもない条件を俺に出していったのは、もうずっと前のことのように思える。でも、すべてはあそこから始まったのだ。

 面倒なことになった。そう思うのは、何度目か。彼女が出て行ったドアを見つめながら、意識せずとも勝手にため息が漏れる。背もたれに体を思いっきり預け、天井に視線を漂わせた。とりあえず状況を整理しよう。

 じいさんから、会社を継ぐには、と出された条件。それは昔の恋人の孫と結婚しろという、とんでもないもので、会社のために心血を注いでいた人が、そんなセンチメンタルなことを言い出すのが、にわかに信じられなかった。

 でも、出されたものはしょうがない。別に結婚に夢見ていたわけでもなかったし、じいさんが決めた相手と結婚するというのは想定内のことだ。しかし、その相手がまったくの想定外なのだから、これには参った。