世界が終わる音を聴いた

Day 6*願いは光の中に


目覚ましの電子音に促されて目が覚めると、今日もいつもと変わらない朝。
仏壇に手を合わせ、母と朝食をとる。
ごく軽いメイクで自転車に跨ぎ、汗を噴き出しながら会社を目指す。
相変わらず止まらない汗に嫌になりながら制服に着替えて、首筋にまとわりつく髪を簡単にまとめた。
何も変わらない1日。

パソコンを立ち上げて、まだ人のまばらな室内を見渡すと、私は朝イチで上司に明日の有給休暇を申請する。
ふわりと昨日、頭をよぎったのは家から出なければ死ぬ要素は格段に減るのではないか、ということ。
だって、私は特に病気があるわけでもなく、死に至るほどの考えられる要因は、事故とかが圧倒的になってくる。
であれば、家でおとなしくしていればその確率は圧倒的に低くなるわけで……、なんて考えて、途中でバカらしくなった。

生きたい思う。
もっと生きていたいと思う。
だけどそれはただ“居る”だけの存在じゃなくて、“心を”生かしたいのだと思い至る。
安全だからと家の中に閉じ籠って明日を終えれば一旦、死は遠ざかるかもしれない。
けれど、一生そこで過ごす訳にはいかない。
その次の日にも、そのまた次の日にだって、同じように生きていられる保証なんてどこにもない。
生きている以上、死は避けられないものだから。

それに家の中にいたって予兆なく倒れることや、家庭内の事故もあるわけで、まぁ、それなら家に閉じ籠ったところできっとその事実は消え去らないことなんだろう、と感じていた。
それは得意の諦めにも似ていて、でも何かどこか違うのは、心の隅ではやはり、生きたいと思ってはいるのだ。


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